AI戦略中間とりまとめ(2025年)を読む

木村 優志

Published: 5/29/2025, 11:12:00 PM

eye catch

2025年2月に内閣府は、AI戦略の中間とりまとめを発表しました。

https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/index.html

今回はこの内容について語りたいと思います。

全体として、AIガバナンスなどの安全性を担保する制度面の話はすすんでいるものの、日本のAIをどう発展させていくかについての議論は不足しているという印象です。

AIガバナンスとは、AIの開発と利用を倫理的・法的・社会的基準に沿って監督・管理する枠組みを指します。AIシステムが倫理的に動作するための基準などのことを指します。AISI(AIセーフティインスティチュート)などの活動により、AIガバナンスの方向性は一定の進歩を見せました。

一方、日本のAIをどのように発展させるかという議論については、生成AIの現状と海外ベンダを排除しないという議論にとどまるばかりで、具体的にどのようにAIを発展させていくかの議論は深くなされていません。NEDOの主催するGENIACのように生成AI開発には多額の公金が使われていますが、それに対する基準などに関する議論も見られませんでした。

私は、今、人工知能学会に参加するために大阪に滞在しています。人工知能学会での発表も生成AI一色です。しかし、海外で発表されたモデルのマイナーチェンジの内容が多く、独自の研究は少ないように思われました。一方で、生成AIではなく、日本製鉄のような自社活動から得られるデータで実直にデータサイエンスをして効率化を図っている企業は、成果を上げているようです。

政府には、2022年の議論に立ち返り、海外の事例に振り回されるのではなく、もう一度、日本産業を発展させるためのAI活用について考えてほしい。