山火事の確率をAIで予測する
木村 優志
Published: 6/4/2025, 9:11:00 AM

山火事の多発
2025年1月、カリフォルニア南部で発生した山火事は、ロサンゼルス都市圏を巻き込み、多数の被害を出しました。少なくとも28人が死亡、数千の建物が破壊され、避難や広範囲にわたる停電が発生しています。
気候変動に伴い、干ばつがすすみ、山火事のリスクは上昇しています。
日本でも、2025年2月に岩手県大船渡市で発生した山火事は、一ヶ月ほど続き2900ヘクタールもの面積を焼きました。3月には、愛媛県今治市と岡山県岡山市でも山火事が発生しています。
今回は、山火事の発生確率を予測するAIについてご紹介します。
山火事を予測するAI
今回紹介する論文は以下です。山火事の予測をディープラーニングで行うシステムのレビュー論文となっています。
hengsen Xu, Jonathan Li, Sibo Cheng, Xue Rui, Yu Zhao, Hongjie He and Linlin Xu, Wildfire Risk Prediction: A Review, arXiv:2405.01607 [cs.LG] https://arxiv.org/abs/2405.01607v4
山火事予測のデータ
山火事の発生を予測するためには、何をもとに予測するのか、予測のもとにするデータが必要です。そのために、発火と延焼という2つの現象を考えます。
発火
火事が発生する直接の原因です。大きく分けて2つあります。しかし、そのほとんど(95%程度)が人間の行動が直接的関節的に関わっています。
- ■自然現象
- 雷など
- ■人間の行動
- 焚き火やレジャーでの料理に使った火の不始末など
雷などの予測には、当然、気象情報が利用できます。人間の行動は直接的には予測できませんが、その場所がどれだけ市街地に近いかや道路からの近さ、標高が低いかなどが利用されます。
延焼
発火が発生しても延焼しなければ山火事にはなりません。延焼しやすさを予測するには以下のデータを利用します。
- ■燃料となるものの条件
- 枯れ葉や落ち葉などがどのぐらいあるかなど
- ■水分量
- どの程度干ばつが起きているか、土壌が乾いているかなど
- ■地形
- 傾斜の強い部分では延焼が早い
これらのデータは、合成開口レーダー(SAR)や、UAVからのLidar を使って取得することが多いようです。
山火事を予測するディープラーニングモデル
地形は2次元的に分布していますし、各データは時間的に変化します。そこで、ディープラーニングモデルも時空間的な特徴を扱えるモデルが必要になります。
その1つが、DCNN (Dilated CNN) です。
DCNN は、積層したCNNの需要野を徐々に広げていくような構造となっており、これにより時系列を扱うことができます。
次に、ConvLSTMです。
ConvLSTMは、Convolution層で得た特徴量をLSTMにより時系列的に処理することができます。
また、論文では、Mamba2 についても触れていました。
Mamba2 は Transformer とは異なる仕組みで、Transformer と比肩する性能を示したモデルで、系列半分離行列(Sequencial Semi-Separable Matrix: SSM)という仕組みからなります。ここでは詳細については割愛しますが、高い時空間表現性能を持ちます。
まとめ
地形の燃料や乾燥度、人間の活動などをつかって山火事の発生を予測することができます。 しかし、地形や人間の活動からのデータは継続的に収集する必要があり、そこに困難があります。